~ 本場のティータイムを、岡崎で ~
イベント開催報告
◆2024.8.5 Keswick美術会
 〈西洋絵画好きな方、大集合!〉
第3回のKeswickイベント、美術会を開催しました。「西洋絵画好きな方、大集合」というテーマで、好きな絵画や画家について語り合いました。
【好きな画家のお話】
・まずは副店長の春名から、フェルメールについてお話ししました。短い生涯で情報も乏しいため、謎に包まれた感じが魅力の一つでもあります。全部で36作ほどと作品数も少ないため、全制覇しようとする人が後を絶たず、我々二人もこれまでに24作を見ました。日本でも大きなフェルメール展が開かれたりするので見る機会は多く、イギリス旅行で3枚を見たり、ドイツ旅行ではフェルメールの絵6枚を全部見るために日程を組んだりしました。フェルメールに関する書籍も、生物学者・福岡伸一さん監修でとても見やすくわかりやすい『フェルメール光の王国展』をはじめ、『恋するフェルメール/有吉玉青』『フェルメール最後の真実/秦 新二・成田睦子』『フェルメール全点踏破の旅/朽木ゆり子』などを読みました。今後は、未見の12枚ほどを見に行くことが目標です。
・次に参加者のKAさんから、好きな画家としてゴッホを挙げて頂きました。小学生の頃にゴッホに関する本を読み、弟のテオがゴッホを支えたこと、ゴッホの死の一年後にテオが亡くなったあとはテオの妻がゴッホ作品の宣伝に寄与したことなどを知り、興味を持たれたとのこと。その後、大阪でゴッホ展をご覧になり、印刷でしか見たことがなかった「ひまわり」の実物を見て感激されたそうです。持参された画集を見ながら、ゴッホが甥のために描いた絵や、耳を切った後の自画像など、当時のエピソードを交えてお話をお伺いしました。我々からは、「ひまわり」は日本のSOMPO美術館が一枚所持しており、常設展示で見られることをお伝えしました。
・店長のあでりーは、美術好きになった頃に見たロートレックの「黒いボアの女」を紹介しました。縦の線で色が表現されており、そんなやり方があるんだと衝撃を受け、ロートレックを好きになりました。ロートレックで有名なのはムーランルージュなどの一連のポスター画で、どれも描かれる対象の特徴をよく引き出しています。ただゴッホと同様、人間性には問題がある人で、酒に溺れてアルコール中毒になり、36歳の若さで亡くなっています。ゴッホが弟を頼ったように、ロートレックは母親を慕っており、援助も受けていました。彼が母親を描いた絵は他の絵とはすこし異なり、とても優しい画風です。ロートレックの版画はたくさんあり、日本でもアーティゾン美術館など所持している美術館は多いので見やすいです。
・KAさんからは、気になる画家としてもう一人、グイド・レーニの名が挙げられました。天使の絵が多く、いつも天使が目を上に向けているのはなぜでしょう、というお話がありました。我々もイタリアでグイド・レーニの絵はいくつか見てきたので、巨大で迫力のある絵が多かったという感想をお伝えしました。KAさんは美術関係の本をいくつかお持ちいただいたので、それを見ながら詳しいお話をすることができました。
・建築家のKIさんは中学生の頃から生け花が趣味で、絵も小学生の頃から描かれており、高校から美術の学校に進まれたとのことでした。今は職業柄、キリスト教会を見るのも好きで、ステンドグラスにもご興味がおありとのこと。シャガールが大好きで、色彩がきれいなところや、見る人や見る時期によって絵の意味合いが違ってくるところも面白い。同じ絵を見ても、ある時は楽しそうに見えたり、別の日に見ると悲しそうに見えたりする、それも大きな魅力だということでした。我々も2015年に訪れたドイツのマインツで、シャガール作のステンドグラスを見て感激したお話をしました。
・店長のあでりーから、現在豊田市美術館で開催されている、エッシャー展についてお話ししました。とにかく素晴らしい展覧会だったので、二人して年間パスを購入し、期間中にあと何度か観に行く予定にしています。エッシャーはだまし絵の人という印象がありますが決してそればかりではなく、数学的な知識に基づいて描かれたイラスト風の絵があったり、普通の絵でも異常なまでに細かく緻密に描かれていて、どの絵を見ても圧倒的な画力とオリジナリティを感じます。ほとんどが版画とエッチングなので黒と白だけの絵が多いのですが、見ているとそこに色がついているように思えてきます。会場では絵を大きく引き伸ばした画像が壁に貼られていて、その画像がまったく粗く見えないので、オリジナルがどれほど細かく描きこまれているかがわかります。それを聞いた建築家のKIさんから、「建築のプレゼンテーションでは、大きく描いたものを縮小して緻密に見せるのに、逆ですね」という驚きの声がありました。
・副店長の春名から、もう一人好きな画家、カラヴァッジョのお話をしました。先に出てきたゴッホやロートレックもなかなかの変人ですが、美術会最強の変人といえばこの人で、荒くれ生活の末になんと殺人を犯して逃げ回り、最後は野垂れ死にした画家でした。なのに物凄い天才で、神々しい祭壇画から小さな静物画、人物画など、下書きなしで超一級品の絵を何枚も描きました。バロックの幕開けとして登場した彼からルーベンス、レンブラントにつながっていく系譜として、後世の画家に与えた影響は計り知れません。我々が2018年に旅したイタリアは、カラヴァッジョを巡る旅でもあって、彼の絵がある美術館や教会をくまなく見て回りました。礼拝堂でカラヴァッジョの絵を見ると、キリスト教徒ではない我々も胸に迫るものを感じずにいられません。彼の絵が世界のどこで見られるかを自分でまとめた「カラヴァッ帳」を作り、旅先でも持ち歩きました。今後は、カラヴァッジョが逃げていく先々で絵を描いて残したイタリア南部地方(ナポリやシチリア島)を旅してみたいと思っています。書籍も、日本のカラヴァッジョ研究の第一人者である宮下規久朗氏がカラヴァッジョの生涯と作品をまとめた『カラヴァッジョへの旅~天才画家の光と闇』や、カラヴァッジョの真作が見つかった経緯を追ったノンフィクション『消えたカラヴァッジョ』など、読み応えのあるものが多数出版されています。
【美術に関する意見の数々】
・絵を鑑賞するにあたり、キリスト教や歴史の知識が非常に役立つし、西洋でも日本でも宗教をモチーフにした似たような題材の絵(地獄を恐ろしいものとして描く、など)があって面白い。
・ふだん、美術の情報をどうやって得ているのかというご質問がありましたので、毎年年末に出る「美術ぴあ」など、翌年の美術展が一覧で記載されているムック本を買って読んだり、NHK-Eテレで毎週日曜朝9時から放送されている『日曜美術館』、9時45分からの『アートシーン』という番組を見たりしていることをお伝えしました。
・ゴッホの「ひまわり」の絵を表示するためSOMPO美術館を調べていると、現在の特別展がロートレック展ということで、不思議な結びつきがありました。同美術館の次の特別展がカナレット展ということで、カナレットの絵についても少し話が及びました。
【まとめ】
初めて開催した美術会は、我々二人がノリノリで企画し実現したもので、当日も二人して精力的にしゃべりまくり、想像した以上に楽しい会となりました。パソコンとモニターを使い、気になる絵や情報があれば即座に調べて画像をみんなで見る、という方法も非常に効果的で、話を深めることができました。苦労して準備をしたかいがありました。今後も、いろんなテーマで美術を語り合う機会を作りたいと思っています。