~ 本場のティータイムを、岡崎で ~
イベント開催報告
◆2024.9.28 Keswickテーマトーク
 〈「仕事」をテーマに語り合いましょう〉
第1回のテーマトークは大盛況で、イベント開始以来、初めて参加枠が満杯となりました! 当日は不参加の方が一名出たため5名の参加となり、店長と副店長を合わせて合計7人での開催となりました。思った以上に話がはずみ、大盛りあがりの会となりました。
【それぞれの仕事のお話】
まずはお一人ずつ、いま携わっているお仕事とこれまでの職歴、そして今日ぜひ話したいことや他の人に聞いてみたいことをお聞きしました。

●まずは副店長の春名から。「カフェは副業で、本業はペットシッターをしています。ペットの飼い主さんが旅行などで家を開ける際、普通はペットホテル等に預けますが、ペットシッターは飼い主さんの自宅でペットのお世話をします。ペットは普段通りの環境で過ごせるので体調を崩すことはなく、飼い主さんも預けや引き取りの手間がかかりません。この仕事を19年ほどやってます。僕は大学入学で名古屋に出てきて、卒業後に名古屋のテレビ局に就職しました。技術職で裏方の仕事を12年ほどやったんですが、大きなプロジェクトを終えて燃え尽きのようになり、将来に疑問を抱くようになって退職しました。それからしばらく試行錯誤したすえ、2005年に、以前から有用な仕事だと思っていたペットシッターを名古屋で開業しました。その後、2010年に岡崎に移ってまたゼロから始めました。僕はアフリカにサファリに行くなど、とにかく動物好きなので、すごく楽しくてやりがいがあり、幸せな仕事だなあと思いながらずっとやっています。今日もこのあと14時からペットシッターの仕事にでかけます。
●イベント常連参加のKTさん。「豊田市から来ました。イベント参加は3回目ですね。自動車会社の協力会社で働いています。僕もあまり仕事が長続きしなくていろんな仕事をやってきたんですが、今の仕事は18年続いてます。工場だと周りは男性ばかりなんですが、今日はせっかくの機会ですし、女性の方が多いので、いろんなお話を伺えたらと思っています」
●初参加のKKさん。「雑穀と野菜の料理教室の講師をしています。教室を始めたのは4年ほど前で、当時は製造業の事務系社員でした。新卒から11年半ほど勤めていて、空いている週末に自宅で料理教室を開いていました。ただ、いろいろと生き方を考えた時に、料理教室でやりたいことがあるのに会社員として忙殺されることに疑問を感じ始め、その時期を2年ほど過ごしたあと、会社を思い切ってやめました。それが2年ほど前です。今は、雑穀、野菜、日本の伝統調味料、甘酒や米あめといった甘味料を使った料理を教室で教えています。
 サラリーマンと個人事業主ってお金の流れから何から全く違うというのは、辞める前からわかってはいたのですが、やはり日々深く感じることでもあります。今日はいろんな人のお話をお伺いして視野を広げたいし、交流できたらと思っています。一度こちらのお店にお伺いした際に素敵なお店だと思いましたし、さらにこんな素敵な会があるとお聞きして楽しそうだなと思って参加しました」
●初参加のSNさん。「生命保険会社の営業所の所長をしています。採用と育成と管理、というのが私の仕事ですが、いろんなところでいろんな人と出会って、生命保険に興味ありそうな人がいたらなあと思っています。この仕事って嫌がられるんですけど、金融や税金の知識もつきますし、人と会って話ができてその人の人生に寄り添える、とてもいい仕事だと思っています。
 大学卒業後、事務員を4年ほど経験し、そのあとは専業主婦でしたが、15年前にこの仕事につきました。今日は、みなさんがどんなことを考えて仕事をしているのか、人生100年と言われるこの時代に、この先どう長く働いていくのか、などをお聞きしたくて参加しました」
●イベント2回目参加のSMさん。「私は商売人の家に生まれたので、ずっと商売に興味がありました。短大を卒業してすぐ会計事務所に勤め、その後に結婚して子育てが終わった時点くらいから、自分で子供用品を扱う仕事を10年間、やらせてもらいました。お客さんとの触れ合いがとても楽しかったんですが、家庭の事情などもあって辞めました。その後、やはり仕事がしたい気持ちがあり、旅行が好きだったので、添乗員を12~13年勤め、日本のいろんな場所を巡りました。その中で少し体調を崩してしまって、それからは仕事をしていません。
 これまでアルバイトも含めていろんな仕事をする中で、すべて好きなこと、好きな趣味を生かした仕事をしてきたという思いがあり、ありがたいことだったと思います。いまいろんな方のお話をお聞きしながら、私ももっと若かったらいろんなことやりたいと思いましたし、まだチャンスがあるかなとも思っています。みなさんのパワーを得られたらなと思って今日、参加しました」
●初参加のAさん。「大学を卒業して市場の事務職についたのですが、給料や他の問題もあって三ヶ月で辞めました。その後に入った商社は倒産寸前になり、26歳でリストラされました。次の会社は、役所から是正勧告があったら事務所が閉鎖になってしまう、といったブラック企業だったので退職し、その後は派遣社員として働いたのですが、リーマンショックに遭って一年ほどで辞めました。それから職業訓練校に通ったあと、再び派遣社員として事務職につきました。その後はコロナ禍もあり、今はホテルのレストランで働いています。
 親からは資格を取ればと言われるんですが、どの資格がいいのかわからないですし、やりたい仕事もよくわからないです。これまで、会社のために働くというより、自分が美味しいお酒を飲むために働くと割り切っていたので、やりたいこともありません。接客業は向いてないのでまた事務職につきたいのですが、なかなか決まりません。今日は、どんな仕事が向いているのかとか、こういう仕事や会社も世の中にはあるんだとか、いろいろなんでも聞きたいと思って参加しました」
●最後に、店長のあでりー。「今の仕事は見てのとおり、カフェを経営しています。これまでの職歴は、正社員が5か所のほか、アルバイトもいろいろ経験し、やりたいことはやってきたと思っています。大学では福祉系を勉強していましたが、施設に研修にいった時にあまりにも悲しくて、ここには就職したくないと思い、自分が何に興味あるかを考えて出てきたのが、お茶(日本茶)でした。それでタウンページを開いて、西尾市のお茶屋さんに順番に電話をかけて「募集していませんか」と確認し、それで抹茶の製造販売の会社に入り、販売をしていました。その後に辞めて結婚し、名古屋に引っ越してからは、ネット通販会社でパソコン作業をしたり、対面で健康食品系を売るちょっと怪しい仕事をしたり(笑)した後、岡崎に戻りました。そこでまた就職先を探したんですが、30代なかばの女性というのは、仕事がないんですよ、本当に。それで一念発起して、看護師の資格を取りました。看護師学校を卒業後に二か所勤めて、その後、このお店を開業するに至ります。
 ですので、いろいろ経験はしているんですが、好きなことしかやってきてないので、今日は他の人のお話を聞いて、またいろいろと幅を広げていけたらと思ってます。皆さんからは、仕事をして得られたこと、楽しかったことをお聞きできればと思っています」
【フリートーク】 ※以下、敬称略
春名「皆さん、どうもありがとうございます。こうやってお話を聞いているだけでも興味深いです。どういう仕事をしているかというのは、どういう生き方をしているのかに割と直結すると思っていて、お仕事の話を聞くとその人の人生が見えてくる気がします。いま皆さんから、仕事に関するそれぞれのスタンスをお聞きすることができました。そこで、今の仕事でやりがいのあるところをお聞きできればと思います。
 たとえば僕ですと、商売を始めたのが今のペットシッターからで、それまで接客業は全く経験がありません。どちらかというと人嫌いで、人と接するより機械と接しているほうが楽という性格でした。たとえば接客業をしている人が、『お客様の笑顔がいちばん幸せです』などと言うのを聞くたび、『嘘くさいなあ、しらじらしいなあ』とずっと思ってました。それがペットシッターを始めてお客さんに喜んでもらえたりすると、本当にめちゃくちゃ嬉しいんですね。それは今も同じです。
 ペットホテルにペットを預けると、人間と違ってペットにはまた飼い主さんが迎えに来ることがわからないから、どこかに捨てられたと思ってしまい、ものすごいストレスになります。それでご飯を食べなかったり体調を崩すペットが多いんですが、ペットシッターだとペットは普段どおりの生活ができるから、ストレスがかかりません。だから飼い主さんが帰ってきてもふだんどおりに迎えてくれる。それで飼い主さんにすごく喜ばれて、ちゃんと料金をもらっているのに、さらにおみやげをもらったりします。お客様に喜ばれるのってこんなに嬉しいんだと気付かされました。
 承認欲求って誰でも強いと思うんです。自分が存在する意味を感じたり、自分が人に良く思われることは、誰にとっても何をするにしても、大きな喜びだと思うんです。それをペットシッターの仕事で与えてもらって、本当にありがたいと思っています」
SN「犬が、知らない人に馴れない、ということはないんですか?」
春名「もちろんあります。初めてのお客様の場合は、必ず事前に打ち合わせに行くんですね。僕はしつけはできないので、ものすごく凶暴な犬をしつけるようなことはできないんですが、いくつかコツがあって、たとえば正面から犬と向き合わないなどを気をつけながら、なんとか犬と仲良くなる努力をします。犬の場合、散歩時のリードの着けはずし時に至近距離で接することになるので、猫よりも慎重になる必要があります。たとえば、お世話訪問の前に一度、留守宅に自分一人で行って大丈夫かどうかを確かめることもあります」
SN「事前準備がけっこう大変なんですね」
春名「はい。それからもう一つ大事なのは、自分で扱えないと思ったら、お断りすること。無理に引き受けても、誰の得にもなりませんので」
SN「変わった動物を扱ったことはありますか?」
春名「こないだヤギのお世話をしました。飼っている人ってたまにいるんですね」
「私も、いつも帰り道ですれ違う人がヤギを散歩させてますよ。夜遅い時間なので、やっぱり昼間より夜のほうが散歩させやすいのかなって」
春名「基本的には犬と猫が九割で、次に多いのがウサギ。それ以外は爬虫類とか鳥ですね」
「爬虫類とか頼まれたら、私なら泣いて逃げるかも」
春名「提携しているスタッフにも、無理なら断っていいと言ってます。さっきの犬の話と同様、自分で扱えない場合はお断りするのがとても大事になります。ヒョウモントカゲモドキという爬虫類のお世話をした時は、生きているコオロギをピンセットでつまんでカルシウムの粉をまぶして与えたりしました。まあ僕は好きでやってるので平気ですけど」
SM「好きなことを仕事にできるのってありがたいですよね」
春名「SMさんも添乗員とか、大変だったと思いますけど、どうですか?」
SM「やっぱり商売人の娘なので、接客業は好きだったんですね。確かに大変ですし、バスガイドさんや運転手さんから嫌なことをされたこともあるんですけど、そのへんのところ、私は〈微笑み返し〉が好きなので」
全員「えー!」「すごい!」
SM「なにかやられたら、微笑んでこちらに引き込むんです。拒否されたらそのぶんだけ私は微笑みで返します。いろんなお客様がいますが、微笑み返しでいつも乗り切ってました。前に10年間自営業をやっていた時、借金もあったし毎日そろばん勘定をしてたりしましたが、結局はやっぱり人間関係なんだなと痛感しました。添乗員の仕事も、自分が旅行好きで始めたので、雨が降ったとしても別のきれいな景色を見つけるとか、それでお客様に喜んでもらえると、やりがいを感じていました。失敗もいろいろありますよ。修学旅行で、自分のせいじゃないのに生徒さんがいなくなって、先生から怒られたり」
春名「そういう嫌なことがあった時に、もうこんな仕事やめよう、と思うことはなかったですか?」
SM「添乗員の仕事は短期間なので、数日間をどうにか過ごせば、なにかあったとしても怒られて終わりですから」
春名「わかります。ペットシッターの仕事も割と期間限定なので、もし嫌なことがあっても、期間が終わればリセットされますので、楽といえば楽です」
SM「自営でお店をやっていた時のほうが、一人のお客様に長く気に入ってもらえないといけないので大変でした。添乗員のほうがリセットはできるし、モチベーションを持って自分も楽しんじゃえと思えるのでよかったです」
春名「〈微笑み返し〉というのが、すごいですねえ。そういう意味で使うのは初めて聞きました」
SM「微笑み返しは本当に、自分の中で大切に持ってます。今でも隣近所の付き合いとかで、やっぱり微笑み返しだなっていうのはいつも思います。そうすればどうにかなっちゃうっていう。自分が楽なんですよ」
春名「そうそう」
SM「自分が苦しい顔をしているのは辛いので、楽しいほうをとっちゃう」
あでりー「私も微笑み返し、使っていいですか?」
KK「私も使いたいです。なにかクレームを言われても、笑顔で接するっていう。すごいです」
SM「いちおうとりあえず、『申し訳ありませんでした』とは言うんですが、さらに笑顔で」
「すごいですね。私、接客しててもいまだにわからないです、お客さんが喜んでくれることとか。『いや、私は仕事でやってるだけなんで』って思ってるので、『ありがとう』とか『説明うまかったよ』って言われるとすごく戸惑ってしまって、『なんでお礼を言われるんですか?』って思います。お客様に喜んでもらえてやりがいを感じることとか、いまだによくわからなくて、だから向いてないと思うんですよ」
SN「素直に、ありがとうって言えばいいと思いますよ」
「逆にクレームのほうがすごく嫌で、なにかあると陰で舌打ちしてるので、接客業に向いてないんです。だから、やりがいがあるとか微笑み返しができるとか、私にはないものですね。どうやったらそんな風になれるんですか?」
SM「どうなんでしょう。私はそういう家庭環境で育ってきちゃってるから、そう言われると……どうなんでしょうね」
SN「たぶん、(Aさんは)自己肯定感が低いからかなあと思います。自分をもうちょっといろいろと大事にしてあげたらいいと思います」
「それ、やったことないですね」
KK「お客さんで、そんな『説明うまかったよ』なんて、よっぽどのことがない限り言わないし、それを自然にできるというのは相当すごいことだと思います」
「聞かれたからその通りに答えただけなんですけど……」
SN「そこで素直にありがとうって言うのが、自己肯定感を高める一つの方法だと思います」
「そんなに褒められても、と思ってしまいますね。だから、いろんなお客さんが来るんですけど、どうしてもクレームの記憶が強く残ってしまうので、飲食業はもういい、人と関わりたくない、という気持ちになります」
春名「他にも、僕が見ていて自己肯定感が低いと感じる人は多くいる気がします。僕も二十代くらいの頃はコンプレックスだけの人間でした。就職にしても人生にしても、何をやっても自分が認められていない感じ、他の人と同じ土俵に立てていない感じがすごくしていて、きっとそれなりのことはしているはずなのに、自分自身に心もとなさを感じてました。
 会社に入った頃に大きなコンプレックスだったのは、お酒のことです。僕はほとんど飲めないんですが、酒が飲めて一人前、酒が飲めない奴は人として社員として失格、みたいな空気をすごく感じてました。だから飲み会に行っても、飲めない自分を自分で責めてしまう。でも考えてみたら、酒を飲めないことと、仕事ができるかどうか、人としてどうかということは全然関係ないはずです。そうなった時に僕は、飲み会の誘いを断る、ということを自分に課したんです。上司の誘いを断ることはけっこう難しいんですが、行っても飲めないし嫌な思いをするだけなので、だったら断ろうと心がけて、頑張ってそうしてました。それを今、すごく思い出しましたね」
「断りづらいとか、時代によっても違いますね」
春名「結局は自分の受取り次第というところがあって、別に欠点でもないことを自分で欠点だと思ってしまう。僕は若い頃はずっとそれとの闘いでした。KKさんはどうですか、コンプレックスとか」
KK「私は、ミスすると自分を責めることもありました。どちらかというと器用に素早くこなせるタイプではないので、なんでこんなに器用にできないんだろう、と会社員の時は思ってました」
春名「なにか辞めるきっかけはあったんですか?」
KK「すごく極端なところまで考えて、今死んだら後悔すると思ったんです。ネガティブな意味じゃなく、今死んだら後悔するような生き方をしたくない、と。会社を辞めて起こる最悪なことってなんだろうと考えたら、収入面で困るとか、飢え死にするとかで、でもやりたいことをやって死ぬんだったらまあいっか、と究極的に思えたら、あまり怖くなくなりました」
「その気持が大事なんですね。私は逆で、やることはないし今死んでも別にいいかなとか思ってて、でも、そうやって今やりたいことをやらないと後悔するっていう考えに変えると、世界が変わるかもしれないですね」
KK「そうですね、そうなると一日一日が大事にもなるし」
春名「僕も年齢がら、死を意識することはすごくあります。大きな病気をされた方はわかると思いますけど、死を間近に感じるようになると、死ぬまでに自分のやりたいことをできるかなと考えるようになります。僕はすごく欲張りでやりたいことがたくさんあるのに、死ぬまであと何十年しかないと思うと、もうどんどんやりたいことをやっていくしかない。しかも、何十年もないかもしれない、明日事故で死ぬかもしれないとなると、余計そうですね。身近な人が亡くなったのをきっかけに、そう強く思うようになりました。何でもすぐにやったほうがいい、やりたいことをやるのに早すぎることも遅すぎることもないと思います。
 我々は夫婦二人とも海外旅行が好きで、行くとなったら二、三週間行きたいし、それが僕にとって最大の人生の喜びなんです。それを今後ずっと続けていこうと思ったら、僕は自営業だから時間の都合がつけやすいけど、妻のあでりーは当時はフルタイムで働いていたから難しい。そこでカフェをやろうと、僕のほうが強く言い始めたんです。ただ、時間の都合はつけやすくなりましたがそのぶん、個人事業だからこの先どうなるかはわかりません。国民年金や健康保険を全額負担しないといけないので、会社員時代はどれだけ恵まれていたかがよくわかります」
KK「ほんとにそうですよね」
春名「SNさんは、仕事にやりがいを感じてらっしゃるとおっしゃってましたが、具体的にはどんな感じでしょうか」
SN「私の会社は学校と提携していて、学校に定期的にお伺いして先生とお話をさせて頂くんです。いきなりプランを提示することは絶対にせず、今後どういう風に過ごしていきたいか、どんな人生設計なのかなど、考え方をお伺いします。私も長く専業主婦をしていて、今まですごく狭い世界で生きてきたので、コンプレックスの塊なのは同じで、だからこそいろんな勉強もしました。いろんな人の考え方を聞いて、こういう風に考える人もいるのか、と許容範囲が広くなったと思いますし、そこが自分の成長したところですかね」
春名「たとえば、嫌なお客様が来たときとか、どうですか?」
SN「嫌なお客様があんまりいなくて。私、みんなに言われるんですけど、鈍感なんですよ」
KK「すてき」
春名「鈍感というか、そういう状況をうまく吸収して、処理してるんでしょうね」
SN「私の出会う方はいい方が多いんです。たまにちょっとどうかと思う人はいますけど(笑)。あとは、定期的に訪問しなきゃいけないというのが背景にあるので、嫌なことがあっても、私は微笑み返しまではできないですけど(笑)、『すみませんすみません』『以後、気をつけます』みたいな感じで、二度と顔を合わせられないような対処はしないことを、覚えました」
あでりー「今お聞きしていて、人間には良い面も悪い面もあると思いますが、良い面を拾おうとされてるのかな、とすごく感じました。その人のいいところを見つけて認めて、その人のことを好きになったり、好奇心を持つのかなと」
SN「そうですね。ありがとうございます。まあ、そうやっていかないとね。嫌なところはみんなありますし」
「私は、嫌なところしか見えないです(笑)」
春名「そういう、人の嫌なところをうまく処理すればするほど、自分が楽になる気がしますね。KTさんはどうでしょう、今の仕事で嫌なこととか、ありますか」
KT「嫌なことですか。嫌なことはまったくないです、さいわい」
一同「へえー!」
KT「ありがたいです。いまお話を伺っていていろいろ勉強になったんですが、みなさんおっしゃってたのは、対人間のことだと思うんです。でも僕の場合は工場なので、物をずっと作っているので、人間関係のストレスがないぶん、まだ楽です。ただ僕のやっている仕事は、2mmずれたらもう駄目なので、そこで神経を使うんですよ。
 僕はいま職制をやっていて、外国人がものすごく多いんですが、彼らは日本語をしゃべれなくて、会社の人達は言語を覚えようという意欲は全くないんです。僕は言語が好きなので、彼らからいろんな言語を覚えられるところが楽しいですね」
春名「それをストレスに感じる人もいると思うんですが、そこで『言語を覚えるのが楽しい』と思えるのがすごい。それこそ本当に、捉え方の問題ですよね」
KT「はい。すごく楽しいです。女性がいないので、男同士で悪い言葉ばっかり覚えるので、そこで盛り上がるんです(笑)」
春名「上司とか同僚とのコミュニケーションも、ゼロではないですよね?」
KT「そこらへんはもう体育会系のノリで、『おいっす、おいっす』って乗り切って、ストレスを溜めないようにしています」
春名「僕の若い頃と正反対ですね。僕はKTさんの元でストレス溜めてるタイプです。KTさんが上司でなくてよかったです(笑)」
「私も、距離を取りたい感じかも(笑)」
KT「僕はなんとか、そういう人の懐にポッと入って、なるべくアドバイスをするようにして、もしかしたら嫌がられるかもしれないですけどなんとかコミュニケーションを取るよう心がけています」
「その点、私はコミュ障だとか言われるし、それは変わらないと思ってます」
春名「いえいえ、僕もそうですよ。僕もコンプレックスはゼロにはなってないんです。いまだにお客さんのところに行く時は、うまくいかなかったらどうしようとか思って緊張しますし。たとえばペットのお世話中に、二階に上がって出てこない猫がいたりすると、もしかしてどこかから逃げたんじゃないか、逃げたらどうしよう、賠償責任を問われるかな、訴えられるかな、と思ってパニックになったりして、そういう時には『ああ、自分の自己評価はまだまだ低いんだな』と思い知らされますね、この年になっても。僕は就職した当時は会議とかでぜんぜんしゃべれなくて、先輩達からは『お前は文章を書かせるとましだけど、しゃべりは駄目だな』とよく言われました。だから元の性格は完全には変わらないけれど、ちょっとずつなら変わっていけると思います」
SM「私は結婚して田舎の農家に嫁いだので、隣近所とのしがらみが強かったんです。それで、『あの人、町から来たんだって』などと言われ、人の視線とコンプレックスが辛かったんですが、その時に助けてくれたのが、本だったんです。心理学や哲学などの本を、いかに自分が楽に生きるかが身にしみるほど、読み漁りました。そうじゃないと苦しすぎました。私も子供の頃、親が商売をしていたので寂しくて、どちらかというと暗い人間でした。それでも、農家に嫁いで子供も生まれて、自分のためというか子供のためになんとかしなければと思い、本を読んで助けられました。だから今も本が好きですし、自分の人生で本はとても大事なもので、感謝しています」
春名「僕もそれはありますね。悩んでいる時に、なにかきっかけはないかと思ってたくさん本を読みました。何冊か心に残っている本もあります」
SN「今はYoutubeで本の解説をしてくれたりしますし、読むのが苦手ならそれを聞くということもできますね」
春名「読書会に出ても、すごく悩んでいた時に本を読んで助けられました、という方はいらっしゃいますね。店長はどうですか、大変な仕事もしてきたと思いますが」
あでりー「まあ、やりたくてやってきたことなので……。私、社会人で看護師免許を取ったんですけど、もともと、いろんな仕事の中で看護師だけは絶対ありえない、と思ってました。注射が大嫌いなので人に打つなんてできないと思ってたせいなのですが、社会人で看護師になった友人から、『注射は看護師学校の研修で一回やるだけだよ』と聞かされて、だったら我慢できると思いました。看護師学校を卒業後、最初は技術を磨く意味もあって、2年半ほど病院で勤めました。それから訪問看護の事業所に転職し、途中でデイケア部門に移りました。
 やはり、人の死と関わることがすごく勉強になりました。訪問看護で気付いたのは、一つ一つの家庭でまったく事情が異なるということで、家族に大事にされている患者さんもいれば、逆に関係が希薄だったり、高齢の方もいれば若い方もいます。そうした家族の関係性を見させてもらったのは大事な経験となりましたし、今後、自分自身が親や義母とどう関わっていったらいいのかを自然に学ぶことができました」
春名「僕は一緒に暮らしてるんですが、妻が看護師になると聞いた時に、『え、そんな!』と驚きました(笑)。そこから本当に看護師学校に入り、国家試験にも受かって、すごいなあと思いました。働き始めてからも、病気と闘う患者さんやその家族との付き合いは、生身の、容赦ないものになりますから、ペットシッターと顧客との関係とはぜんぜん違ってものすごく大変だし大きなストレスになるだろうと思っていました。病院だと夜勤があるし、訪問看護だと待機の時には携帯を持たされて、夜中の2時3時でも呼び出されると行かないといけません。大変だったと思います」
あでりー「いちばんすごかったのは、17時半から翌日の8時半まで待機になった際、合計3回、同じところに呼び出されて、しかも自宅から片道30分ほどかかるお宅でした。その方は結局、3回目の訪問のすぐ後に亡くなられたんですが、家族としては不安なんですよね、誰かにいてもらわないと。家で看取ると決めたけど、なにかやりたくても実際にはなにもできない、誰かになにかを言ってもらいたいというのはあると思います。私も、これでいいのかどうなのかと疑問を持ちながらやって、疑問を持ちながら終わって、結局だいたい未消化のままで終わるんですけど、自分が支えになれたかどうかは御本人に聞いてみないとわかりません。そんななか、定期で訪問看護に行っていたお宅で、一緒になったヘルパーさんがたまたま小学校の恩師の娘さんで、その人が、『いつもいい感じでやってくれてて』と言ってくれたので、ああ、これでいいんだとようやく思うことができました。それでも、それを聞いた後でもまた『これでいいのか』の連続で、人によって受け止め方も違うし、その時に自分が相手にとっての最善を尽くせていたかどうかはいつも疑問でした」
春名「ちゃんとやってても、そう受け取らない人もいますしね。僕の父親が二年ほど前に亡くなったんですが、その時に二ヶ月ほど自宅介護の状態になって、母親が面倒をみてたんですね。それで週に何度か女性の訪問看護師さんが入ってたんですが、僕の見るかぎり、すごくスキルが高くて心配りもできる人でした。いい仕事をしてるなあと感心してたんですが、母親は彼女をすごく嫌ってたんです。その理由は単純で、自分の夫の体を触ったり、いろんなお世話をしたり、それですこし仲良くなったりするじゃないですか。それが母親は気に食わなかったんですね。実家が兵庫県なので僕も月に一回くらい帰るんですが、看護師さんが来られて父のお世話をしている時に、母親が台所で泣いていることがよくありました」
KK「それはそれで素敵ですよね」
「そこで喧嘩になる人もいますよね。喧嘩にならずに泣いているお母様は、お優しい方だと思いますよ」
SM「お父様も幸せですよね。精一杯愛されて」
春名「だからちゃんとやってても、そうやって悪く受け止めることもあるんですよね」
「今の私の仕事はほとんどそれですね。私は良かれと思ってやってるんですが、ちょっと忙しくて疲れてる時にどうしても顔に出てしまって、そしたら後で『◯◯という店員が最悪だった』とクレームがあったりして、こちらは一生懸命やってるのに、たまたまうまくできなかったり、たまたま表情が固かったりしただけでそうなるのか、なんでそんなことを言われないといけないのかと。一生懸命急いでやってるのに、混んでくると客が怒り出して、『遅いんだよテメーは』とか『もっとテキパキ働けよ』とか言われるんですよ。そういう経験ばかりが残ってしまうので、辞めたいと思ってしまいます」
SN「そういうのも心理学的に言うと、すべて相手の心の問題なんです、怒ったりするのはね。だから、大丈夫ですよ」
「でも上の人からも怒られるんですよ、こういうクレームが来てるから気をつけて、と。お客さんって、細かいところを見てる人はいて、例えば、何かをちょっと拾った後に布巾でテーブルを拭こうとしたら、『あの店員、ゴミを拾ったあとにテーブル拭いてるよ』とか言われたりして」
春名:「リアルでもネットでも、何かに怒りたい人は一杯いるんですよ。そのはけ口を見つけるや、集中攻撃してくる」
「だからもう事務職に戻りたいです。経理とか総務とか、ずっとパソコンに向かって人と関わらない仕事がいいです。微笑み返しとか、私には絶対できないので」
SM「微笑み返しって、自分が楽なんですよ」
KK「それがいいですよね。相手のためにってなると、どう受け取るかは相手次第なので、自分のために、自分が楽だからやるっていうのが一番いいと思います」
「そのやり方がわからないんですよ」
SN「相手からわーっと言われた時は、それなりにシュンとした顔をしてないといけないかな。それで、その次に会った時に、ニコッとすればいいですかね」
「でも、それで同じお客さんが来ると、『ああ、また来た』『あれだけ文句言ったのに、なんでまた来るの』『辛いからもう来ないで』と思います」
春名「たぶん、言ったほうはそれほど気にしていないかも。言われたほうはずっと深く気にしているかもしれないけど」
SN「そうなると、工場関係はいいですよね。ずっと機械が相手になるので」
「技術があれば、そっちをやりたいです」
SN「技術がなくてもいいんじゃないかな。私の娘の友達は保母さんをやっていて、赤ちゃんクラスを担当した時、あまりの責任の重さに鬱のようになってしまって、今はSONYの工場に行っていて、外国人しかいなくて、ずっと喋らなくていいし、事務仕事も頼まれたりするけど全然大丈夫だし、すごく楽だと言ってました」
KK「いろいろ経験されると、新しい発見があるのかなと思います」
「実はパティシエになりたかったんですけど、中学を卒業してその道に行きたいと言ったら親に大反対されました。うちの親は大学に行く人が素晴らしいという考えなので、高校を出て専門学校で行きたいと言っても駄目でした」
KK「パティシエって過酷な仕事なので、親からしたら心配だったのかも」
「だから私は大学に行きたくはなかったので、適当に入れるところ入ればいいし、仕事も適当にお金が入ってくればいいと思って、やりがいとかもわからないし、接客業もそういう怖い思いをしていると、もともと向いてないですし……。あでりーさんからは、『ちゃんとできてるよ』って言われるんですけど、『できてません』『無理です』『怖いです』という感じです」
あでりー:「Aさんとは15年くらいの友達なんです。職業訓練校で、彼女は周りが敵だと思ってガン飛ばしてたらしいんですけど、私はすごく鈍感なので話したくてしょうがなくって(笑)」
「絶え間なく話してくるので、最初は、『なんなの?』って思って(笑)。美術館に行くと話したら、『どこの美術館に行ったの?』とか『どの画家が好き?』とか聞いてくるので、そんなこと聞いてなんなの、と思って(笑)。最初は怖いと思ってたんですけど、物怖じせずにどんどん来るんですよ」
KK「そういうのも大事ですよね、どんどん行くっていうのも。保険のお仕事でも、最初はそうやって心を開いてくれない人はいますか?」
SN「いますねー」
KK「それもやっぱり通い続けて変えていく、という感じですか?」
SN「そうそう。そういう法則があるんですよ。何回も顔を見せることで親しみがわく、という。なのでやはり定期訪問が大事です」
SM「女性が働くのって、家庭環境とか経済面のことを考えますよね。男性は男性で大きなものを背負っているので大変だと思うんですけど」
KK「私も年齢がら、子供を持つのかどうかなど、ちらちら考えます。でもこれが正解というのはないので、自分が悔いなくやれれば」
SM「親御さんは心配されてます?」
KK「いやそんなこともなくて、だから案外助かってます。うちのお祖母ちゃん世代だと、容赦なく『早く子供を生んで』とか(笑)」
「女性は結婚して子供を産んで家庭を持つのがいちばん幸せっていう世代ですね」
KK「いま会社員を辞めて、ようやく自分の仕事に没頭して、ふといろいろ考えた時に、これまで子供を持ちたいとかあまり考えて来なかったんですが、いったん子供を持つと仕事のペースも変わりますし、そこへの葛藤もあったり」
春名「僕が昔思っていた、『酒を飲めて一人前』と同様、女性は結婚して子供を産んで一人前、という固定観念がまだまだ強くあるんでしょうし、それに苦しめられている人はいっぱいいると思います。人それぞれ、と思えればいいんでしょうけど、そこは自分自身との葛藤になるでしょうね。
 僕は、人は自分にできるかできないかで判断しがちだと思うんです。夢があっても、自分にできるかどうか考えて、できないからやめてしまうとか。たとえば僕らは去年、カフェをオープンしましたけど、カフェを開きたいと思う人はたくさんいて、でも私には無理だと思って諦める人もたくさんいます。僕らはカフェを経営するのはこれが初めてだし、でも二人でゼロから始めて、物件探しをして、壁を自分たちで塗って床材を張って、ひとつひとつやって去年の12月にオープンしたんですけど、僕らに特別な力があったからできたわけではなくて、やったからできただけ、なんですよ」
あでりー「うんうん」
春名「ほんとにそれだけなんですよ。それはすごく思ってます」
あでりー「私の習っていた紅茶の先生が言ってたんですけど、その先生の娘さんが東京で働いているティースタンドがあって、そこを経営している人は全然紅茶の知識はないんですって。だから営業のノウハウだけで、あとはアルバイトを雇ってその人に紅茶のことを聞いて、ちゃんと儲かっているんです。だから結局、やろうと思うかどうかという感じですね」
春名「最初から上のほうを見ちゃうと難しく思えるんだけど、本当に目先のことだけやると、そのちょっと先が見えてくる。それでちょっと先まで行くとまたその先が見えてきて、それを繰り返しているといつの間にか目指すところまで来ていた、という感じですね。たとえば僕、若い頃にフルマラソンを3回くらい走ったことがあるんです。それで、僕は断言しますけど、ここにいらっしゃる全員、フルマラソンを走れます。いや、やらなくていいですよ(笑)。もちろん練習は必要ですが、僕も当時そこまですごく練習したわけではないし、ぜんぜん早くはなくて最高タイムは4時間20分くらい。だから、フルマラソンを5時間くらいで走れるかどうかと考えたら、ここにいる全員、走れます。でも、そんな風に思えないじゃないですか。それくらい、自分に足かせをつけてるんです。もちろん、やりたいと思わなければできないけど、やれるかどうかという能力だけ考えれば、みんなできます。だから偉そうですけど、若い人とかを見て、もったいないなあと思うんです。壁を作っているのはぜんぶ自分だったりするんですよね」
SN「何かを選択する基準は、今おっしゃったように、『できるできない』じゃなく、『やりたいかやりたくないか』ですよね」
SM「私、お店を開く時に借金をしたんですね。洋服だって好きなブランドじゃないと胸張って売れないじゃないですか。だからいろいろ調べて東京行ったり大阪行ったり、本当に、主人にも子供にも申し訳ないと思ってますけど、やっぱりやりたかったんです。KKさんも、いま一人で始められて、すごく勇気がいったと思います。私の時代とはまた違って、ネット社会だし情報が錯乱してて、大変じゃないですか。私の時はネットもないし、看板作ったり口コミで来てもらうだけでよかったけど、今は何かあるとネットで書き込まれたりして、商売している人はすごく大変だと思います。そう考えると、みなさん本当にすごいと思います」
KK「今のお話で、実は私はもともと料理が苦手で、自然食系の料理教室に通ったけど続かないこともあって、たまたま今自分がやっている料理に出会ったら簡単で美味しくてはまりました。それで、普通に定年まで会社員として勤めるつもりだったのに、なんと自分が料理講師になっちゃいました。周りに反対する人もいっぱいいたんですけど、自分の決断だから後悔はないですね」
あでりー「(KKさんの料理教室が)岡崎にできたんだと知って、嬉しかったです」
KK「嬉しいです、そうおっしゃっていただいて。今はSNSもやらなきゃいけないので、大変は大変ですね。でも、(料理教室の受講者さんから)シミが消えましたとか、歯医者さんで歯の状態がいいと言われましたとか、よく言われます。また、私と同じくもともと料理が苦手だった方が料理するようになりましたとか、楽に料理できるようになりましたとお聞きすると、やりがいを感じます」
春名「KKさんは、なにか団体に所属してらっしゃるんですか?」
KK「はい。そこの料理教室に参加した時に、料理がすごく簡単で美味しくて、自分でもできると思ったんです。それでその団体で学んで、認定講師の資格を取りました」
春名「活動としては個人でやってらっしゃるんですか」
KK「はい。その団体のカリキュラムや講座があって、それを使わせてもらったりしますけど。教室は、基本はデモンストレーション式で、見て頂くだけがメインなので、料理苦手な方とかお子さん連れの方とかでも大丈夫です」
春名「週にどれくらいやってらっしゃるんですか?」
KK「週に4~5回のこともあれば、1回もないこともあって、バラバラですね」
春名「それは、ご自分でお決めになってるんですか?」
KK「そうですね。逆に要望があったらこの時に、ということもありますけど、自分の裁量で決めてます。生徒さんからも、どうしてもこの曜日がいいとかありますし」
春名「最低人数はあるんですか?」
KK「基本は、一人でもリクエストがあればやります。そこに追加で入ることもありますが、一人きりだったなら、その回はマンツーマンがベストだったんだと思うことにしてます」
春名「いいですね、そういう考え方で。一回は2時間くらいですか?」
KK「そうですね、だいたい2~3時間がほとんどですね」
春名「個人事業を始めると、時間がほんとに不規則になります。1日に2時間の仕事があるとすると、それ以外がプライベートの時間になりますよね。僕のペットシッターの仕事も、朝夕に固まることが多いので、だいたいお昼は家に帰ってご飯を食べます。そういう空いた時間にゆっくりしたり映画を見たりできますね。そのかわり、まったく仕事のない日は月に数日くらいです。ただ、ある程度時間の都合はつけることができて、今日もこのイベントのあと14時くらいなら時間がとれるので、すぐ近くのお客様宅に事前打合せの予定を入れたりしています。そのあたりは自分でコントロールしてますが、だんだん仕事かプライベートかわからなくなりますね」
KK「それは私もすごく感じますね」
春名「昔は、仕事とプライベートをきっちり分けたいと思ったこともありましたが、今はもう別にいいかなと思ってます」
SN「私の仕事もそうですよ。朝9時はミーティングがあるので必ず行くんですけど、それ以外は自分の責任で好きに組んでいきます。今日もこのあと、会社に行こうとは思ってたんですが、商談をお願いしますと連絡があったので、そちらに行きます。仕事の合間に歯医者に行ってまた仕事に戻ったり、けっこう自由にできますが、ほんとにプライベートなのか仕事なのかわからなくなります」
春名「社員で、そういう形にできるんですか?」
SN「生命保険って特殊で、社員として社会保険を会社に負担してもらいながら、給料は個人事業主なので、いいとこどりなんです」
KK「確定申告とかは、ご自身でやられるんですか?」
SN「そうです。だから経費管理もしっかりしないと」
春名「個人事業主には、確定申告という山がありますからね。KTさんはどうですか? 僕もそうでしたが、勤めているとどうしてもストレスで辞めたくなったり、自分で仕事を始めたいとかという気持ちになっていきそうですが」
KT「そういう考えは持ったことないですね、すみません(笑)」
春名「いえいえ。でも、それは幸せなことだと思いますよ。学校を出てからずっと今の仕事をされてるんですか?」
KT「いえ、最初は格闘技で食べていこうと思って、それからもいろんな仕事をして、今の仕事に流れ着いたという」
春名「ずっといい感じでやってこられたんですね」
SM「たとえば語学を活かして、何かやりたいと思われたことはないですか?」
KT「ないですねー」
KK「できそうなのに」
春名「今の状況がそれだけいいんだったら、ありがたいですよね」
SN「今だと、75歳くらいまで勤められますから、仕事をやりながら空いている時間に好きなことをやれますね」
KK「いちばんいいですよね。安定した収入がありながら、好きなことができるって」
KT「でも今、皆さんのお話をお伺いしていて、ほとんど皆さん人との関係なので、向上心を持ってお客さんとのコミュニケーションを良くしたり、自己啓発をおこなったりというお話が多かったですが、僕ら工場作業員は、相手が物なので、同じ服を着て一緒に体操をして同じ作業をして、決められたルールの元に物を作って、2mm違ったらアウトというような繰り返しなので、今年になってもう7人辞めてます。逆に、そういう環境がいいと思う人が残っています。でも、声が大きいところがコンプレックスで……」
KK「いいと思いますよ。声の大きい人のほうが人生得するって何かで読んだことがあります。声が通るって素晴らしいことで、同じことを言ってても、声でだいぶ印象が変わります。部下の人に対しても、よりわかりやすく伝わるのかなと思います」
KT「ありがとうございます。自信になります」
あでりー「私も短期アルバイトで、おせち料理を詰める仕事や麺類を作る仕事をしたことがあります。同じ作業なので、楽なんだけど物足りなさを感じましたね」
「向いてる人と向いてない人がいますよね。私がむかし働いていたガラス雑貨店の店長は、商品を詰めている時に、『こういうこと、工場だと毎日やってるんだよね。私は今だけでもやりたくないのに』と嘆いてました。嫌な人は、ただ数分やるだけでもできないから、それが嫌で辞めることがありますね」
SM「私は駄目でした。学生の時に5人で工場で働いたんですが、三日でもう嫌になって私一人だけ辞めました。自分は接客業が向いているんだと思いました」
あでりー「前にAさんからレモンをずっと輪切りしていた話を聞いて、私はおせちを詰めるよりも、ひたすらレモンを切るほうが続くかなと思います」
「天ぷら居酒屋のアルバイトに短期で行った時に、レモン酎ハイが売りだったらしく、ひたすらレモンを切ってて、この仕事向いてるみたいと思いました。今の飲食店でもずっと箸を詰めているほうがよくて、一日ずっとこれやりたいから外に出たくありません、とか思います」
SN「そういえば友達が『鳥貴族』でずっと肉を串に刺してるって言ってました。そういうほうが、逆に無心になってやれるんでしょうね」
KK「無心になれるのは、いいですよね」
「接客するより、ずっとお皿を洗ってたいんですけど、そういう時に限って接客スタッフが足りなかったりして。『嫌だ、洗い場にいる』って言いたいんですけど(笑)」
SN「ガストとかみたいに、猫ちゃんロボットが働いてくれると、フロアはいらないですよね」
「ロボットが入っても、人がやることは一杯あるんです。タッチパネルの注文もそうなんですけど、前に働いてた居酒屋で高齢者のお客さんしかいなくて、『タッチパネルで注文できますよ』と言ってるのに、口頭で『ビール追加!』とか言われて、『タッチパネルから選べるでしょ』とキレそうになります(笑)」
SN「今はスマホから注文するシステムもありますね」
「その居酒屋では、タッチパネルの使い方を、ここがこうで、ここを押してとか、詳しく教えてました」
SN「だったら、手書きと変わらないですね」
あでりー「私、これまでやったアルバイトの中でいちばん楽しかったのが、麹(こうじ)屋さんでした。麹を作るために麹菌をまぶして、それを寝かしておくんですけど、次の日に手を入れると人肌で温かくて、すっごく気持ちいいんですよ。本当に生きてる~って感じ。麹の生命力を感じて、それが楽しかったです」
KK「やってみたくなりますね」
春名「(KKさんに)合ってると思いますよ。でも、そういうのが楽しいと思える人と、なんでこんなことばっかり、と思う人もいますよね」
「菌を触るのが嫌だ、とか」
あでりー「発酵もすごく好きなので、自分で作れるものは作ります。去年仕込んだ味噌は今が食べごろです。これまで作った中でいちばん長くかかったのは、魚醤です。カタクチイワシを寝かせてナンプラーのように作るんですが、さらに今はそれを使って、『なまぐさごうこ』という発酵食品を仕込んでいて、完成まであと1~2年かかります」
春名「何を楽しいと感じるかは本当に人それぞれなので、それを見つけたいですね」
「私はたぶんまだ見つかってないです。総務とか経理をやりたいとは思うんですが、声がかかるのはいつも飲食業とかホテルですね。木曽路さんでバイトした時も、『社員になりませんか、すぐ採用するから』と言われたんですけど、自分のやりたいことと、外から言われることがあまりにも違いすぎて」
SN「事実は一つで解釈はプラスかマイナスしかなくて、プラスにいったらプラスのスパイラルになるし、マイナスにいったらマイナスのスパイラルになる、というのはよく聞く話で、本当にその通りだと思います。一つの出来事の中にいかにいいところを見つけていくかで、人生が変わっていくと思います」
春名「事実そのものにはプラスもマイナスもなくて、それをいかに解釈するかにかかっているんですね。そこが難しいところではあるんですが。だから、KTさんはすごいと思います」
SN「貫いてますもんね」
KT「そうですか? 自分では全くそんな風に思ったことないです。ありがとうございます」
春名「工場で、そうやってどんどん人が辞めていく状況で、日々を楽しんで過ごしているというのはすごいです」
KK「マイナスに引っ張られちゃうというか、マイナスの解釈をしそうですけど」
SN「プラス思考に変えてらっしゃいますよね。言葉を覚えてコミュニケーションをとろうとか」
春名「今回、3回目のご参加ですけど、KTさんっていつも礼儀正しくて素晴らしい、と二人で話してます」
「人を不快にさせない人なんでしょうね」
KT「ありがとうございます」
SN「元マクドナルド店長の鴨頭さんがおっしゃってました。思っていることしか現実にならないから、マイナスのことを思っていたらマイナスの現実になるので、そこをプラスに変えていくと現実もプラスに変わっていく、と」
「いま働いている副業のお店でも、会うたびに店長から『直接雇用はどう?』と言われてます」
KK「それは認められているってことじゃないですか。誰彼なくそんなことは言わないですよ」
「そんなそんな。でも、そこじゃなくて私は総務とか経理で認められたいのに、やりたくないことのほうで認められているっていうのがあって……。接客業が好きになれれば簡単だと思うんですけど」
SN「まずは認めてもらえるところで一所懸命やっていけば、行きたいところに行けるかもしれない。与えられたことを一所懸命やる、それが一番で、その先に事務員になれると思ってがんばれば、そういう道が開けてくるかも」
春名「Aさんは、いろんなものを持ってらっしゃると思うんですよ。それがすごくもったいないなあと思って。
 僕、環境はまったく違いますけど、会社に入ってすぐの頃に、すごく認めてもらえたなあと思った瞬間がありました。10畳くらいの部屋に新しい機械を入れることになって、部屋に置いてある機械や机や棚とかの配置図を作ることになったんです。この機械の横幅と縦幅は何センチか、壁から何センチ離れているか、などを細かく測り、図面化していきました。これって時間がかかって大変ですが、難しい仕事ではないですよね。でも、完成させて提出すると、『よくやったな』と褒められたんです。僕は、『あ、これで認められるんだな』と思いました。特別な能力やアイデアが必要なわけではない、ただ淡々と一つ一つやっていっただけで認められたんですね。割とみんな、はしょったりちょろまかそうとするんですが、そこを愚直にやっていけばいいんだと思ったのを、今でもすごく覚えています」
「統計学的にいうと、ちょろまかす人のほうが多いと思います」
あでりー「私もそうかも」
「ちょろまかすか、それとも途中で嫌になって投げ出すか」
春名「それはもったいないなあと思います。もちろん、僕らの頃は就職にはいい時代だし、男性は女性よりどうしても優遇されてしまっているから、同じようには語れないとは思いますが」
「(ここにいる人も)それぞれ、世代が違いますよね。私とあでりーは就職氷河期でバブルとか知らないですし、KKさんだと、大学卒業の頃は逆に人手不足とか、もっと時代が下ってリーマンショックの頃だと派遣ですら仕事が決まらなかったり」
春名「KKさんは、ゆとり世代ですか?」
KK「そうですね。円周率は3.14でしたけど。会社に入った時は、ゆとり世代だって言われました。でも私はそれをうまく利用して、『あ、ゆとりなんでごめんなさーい』とか言って(笑)」
「私はゆとり世代の方を尊敬することがありました、ずばっと言えるところとか。会社の飲み会の誘いでも、『お金発生するんですか?』『それって仕事ですよね?』って言えるし、お酒を勧められても、『ビール飲めないんで、甘いもの下さい』って平気で言えたりとか」
KK「そういうのも、会社や部署によってぜんぜん違ってて、私は割と体育会系の部署にいて、飲み会でも強要されることはありましたし、偉いさんの横には女性社員が座る、とかありましたね。十数年前ですけど。でも同じ会社でも、『私、甘いのくださーい』とか言える部署もありました」
春名「今はもう大きな会社だとコンプライアンスの部署があって、いろんなハラスメントが指摘されるから、そういう面ではやりやすくなったかもしれませんね」
「でも逆に、しゃべれなくなったとも聞きます。いまこれを言ったら◯◯ハラスメントになるから、とか」
春名「男性が女性社員に、『髪切った?』とか言うとハラスメントにされちゃったり」
KT「それだけで?」
「だめですね」
KT「ええーっ!」
「『痩せたね』とか『かわいい服着てるね』とかも駄目」
あでりー「ちゃん付けは駄目だとは聞いてたけど」
「逆に、女性が男性の体を触ったり、女性から男性への『太ったんじゃない?』とかいう言葉でも、男性が訴えれば女性が悪いってことになります。相手がセクハラと言えばセクハラになってしまいます」
春名「今は社内恋愛なんかもすごく難しいでしょうね。何かに誘うことだってセクハラにされちゃいますし。だから結婚も難しくなってると思います。いま、結婚するカップルの10%くらいはマッチングアプリじゃなかったかなあ」
SM「そうなんですか」
SN「多いですよね。私も、お客さんに『どこで知り合ったんですか?』って聞いたら『アプリです』って」
「今の若い子は、合コンも知らないらしいです。聞くと、『合コンって何ですか? マッチングアプリでいいじゃないですか』って」
KK「コロナもあってそういう傾向が強まったんでしょうか」
あでりー「逆に私が最初のお茶屋さんで働いている頃は、社外で出会う機会が少なくなってきたという時代で、だから社内恋愛がすごかったんです。65人くらいの小さな会社で、何組もありました。ぜったい嫌だと思ってました(笑)」
「社内だと周りも気まずいですし」
春名「昔は、職場が圧倒的に男女の出会う場ではあったんでしょうね」
【まとめ】
初めてのテーマトークは、参加者全員がほぼ均等に発言され、思った以上に盛り上がりました! やはり仕事は人生と切り離せないテーマですので、語りがいがあり、皆さんの言葉に日々の思いが凝縮されているように感じました。仕事に対する様々な捉え方をお聞きし、刺激になりましたし、自分の気持ちを再確認することもできました。このテーマを選んでよかったと思っています。参加者の皆様、本当にありがとうございました。