イベント開催報告
◆2025.5.16 Keswick美術会
〈気になる美術展特集!〉
〈気になる美術展特集!〉
「気になる美術展特集!」というテーマで実施しました。これから日本で開催される美術展のほか、これまでに見た美術展のお話や、海外の美術館のお話、海外渡航のお話へとどんどん広がっていき、美術会と旅行会を足したような内容となりました。

【詳細な内容】
◆まずは自己紹介と共に、ふだん美術とどう関わっているかを紹介し合いました。
副店長・春名「ヨーロッパを旅行すると、美術鑑賞が中心になります。どこも美術館がすごくて、特にイタリアはルネッサンス美術が豊富です。一枚でも日本に来たら美術展の主役になるような絵がずらっと並んでいるので、感覚が麻痺してしまいます。フェルメールの絵が好きなので、ドイツには6点ほどあるんですが、それらを巡る旅をしました」イベント初参加のSさん「私もフェルメールは好きです。『真珠の耳飾りの少女』など、何回かフェルメール展を観に行きました」
春名「フェルメール展の『牛乳を注ぐ女』は、初めて観て感動しました。夫婦でイギリスに行った時も、ナショナル・ギャラリーで『ヴァージナルの前に立つ女』と『ヴァージナルの前に座る女』、ケンウッド・ハウスで『ギターを弾く女』を見ました」
Sさん「ケンウッド・ハウスには私も行きました! 2013年に初めて行ったときは改装中で閉館していたんですけど、去年再訪してようやく見ることができました。あそこは本当に素敵なところですよね。夫とは別行動で、カムデン経由でアーチウェイ駅からバスで行きました」
春名「ケンウッド・ハウスは空間自体がとても良くて、お弁当を持ってピクニックに行きたくなるような場所でした。僕達は、行きは地下鉄でゴールダーズ・グリーン駅まで行ってそこからバスに乗り、帰りにアーチウェイ駅まで出て、地下鉄で戻りました」
Sさん「私は子供の頃、学校から美術展のチケットをもらって、よくゴッホ展などに行っていました。当時は、先生から『これやってるから見ておいで』と言われて、教科書に載っているような作品を観に行く程度でした。
本当に美術に興味を持ち始めたのは、ヨーロッパに行ってからです。それでも有名な展示があるときだけ見に行くくらいで、歴史や背景などもわからず、『モネはきれいだな』とか、その程度にしか見ていませんでした」
春名「いえいえ、ケンウッドハウスに行くくらいですからすごいですよ! ふつう、あそこには行かないですから」
Sさん「文化的な背景もわかるようなったのは、大人になってからです。豊田市美術館にフェルメールの『地理学者』が来た時には、特に詳しくもなかったのですが、とりあえず行ってみようと思って行きました。絵が思っていたよりも小さくて、でもとても緻密で、サイズ感や質感に驚きました。それで『本物って全然違うな』と思って、少しずついろんな展覧会に足を運ぶようになっていきました。いずれは、オランダやベルギー、ドイツにも行ってみたいです」
春名「フランクフルトにあるシュテーデル美術館には、豊田で見た『地理学者』があるんです。でも僕たちが行ったときには貸し出し中で観られませんでした」
店長・あでりー「美術はもともと好きではあったんですが、積極的に見に行くほどではありませんでした。名古屋に住んでいた2007年頃に、ボストン美術館でレンブラントの版画展があって、そのポスターを見て惹かれて、そこから美術展に通うようになりました。テレビでも美術関係の番組を見るようになって、フェルメールにもハマりました。2008年に西洋美術館で見た『レースを編む女』が、初めてのフェルメールです。
今は、現代美術は正直よくわからないんですけど、それ以外の美術はだいたい好きです。日本画も大好きで、特に明治から昭和にかけての作品が特に好きです」
春名「僕は日本画はほとんど興味がなかったんですが、一度名古屋で浮世絵展に行ったときに肉筆画を見て、ものすごく綺麗でびっくりしたんです。そこから少しずつ日本画にも興味を持つようになりました」
あでりー「以前、世界に影響を与えた100人という中で、唯一の日本人が葛飾北斎だ知り、すごいと思いました」
◆次に、今年の美術展をまとめた美術誌を見ながら、さまざまなお話をしました。
春名「Sさんは、最近見られた美術展はありますか?」Sさん「実は先週、名古屋市美術館の『西洋絵画の400年』展に行く予定だったんですが、今日のイベントでいい情報が得られるかも、と思ってやめてしまいました。6月の頭に行こうかなと思っています」
春名「僕たちはすでに行ってきました。展示は、歴史の流れに沿って現代まで紹介されていてわかりやすく、有名な画家の作品もたくさんあって、見応えがありました
同じく伏見の名古屋市科学館でやっている『鳥展』も良かったです。絵ではなく、鳥に関する剥製や標本などの展示で、鳥が好きじゃない人でも楽しめる内容でした」
あでりー「東京の国立西洋美術館でやっている『西洋絵画、どこから見るか?』展も面白そうなんです。西洋絵画のルネサンスからバロック、印象派までの絵について、日本のコレクションと海外の作品を比較して展示するという内容です」
Sさん「今度の日曜から関西方面へ旅行に行く予定で、せっかくなので大阪や京都の展覧会も見られたらと思っています。大阪市立美術館では日本国宝展をやっていて、尾形光琳の『燕子花図屏風』とかすごいものが出品されています」
あでりー「『燕子花図屏風』は、最近まで根津美術館で展示されていたので、その後に大阪に行くんですね。あれを見るのが私のライフワークの一つなんです」
Sさん「あの時期に、根津美術館に見に行くのもいいですよね」
あでりー「そうですね。今は完全予約制なので、朝一番の時間に予約すれば、人が混んでない状態で見られるかなと思っています」
春名「大阪の国宝展には、『漢委奴國王金印』も来るんですね」
あでりー「京都の国宝展か何かのときにレプリカが置いてあって、それを持ったことがありますよ。小さいけれどけどずっしりしていました。金ですから。
今年は国宝系のもので結構面白いのがいろいろあって、奈良の国宝展も面白そうなんですよ」
Sさん「そうですね。中宮寺の『菩薩半跏像(ぼさつはんかぞう)』が展示されますよね。奈良は大好きでしょっちゅう行きます。国立博物館も、特別展示のない時でもすごくいいです。奈良では仏像を見るのが好きで、美術館で細部まで見られるのもいいんですが、やっぱりお堂に入ってるお姿が好きですね」
あでりー「やっぱり違いますよね、もともとお堂にあるものですから」
Sさん「今はみんなガラスケースに入ってしまって、ある程度しょうがないんですけどね」
春名「キリスト教の絵画も、教会の決められた場所に飾られる前提で描かれているので、高いところに掛けてあるものは、見上げた時にきれいに見えるような構図になっていたりします」
あでりー「日本だと、襖絵は座った時の目線で描かれています」
Sさん「折れ曲がっているから空間ができて、それをうまく使って見せる感じですね」
Sさん「こうして話していると、いろんな美術展に行きたくなりますね。『オルセー美術館所蔵 印象派―室内をめぐる物語』も行きたいです。印象派を好きになったきっかけが、オルセーだったんです」
春名「ウェブサイトを見るとドガとかマネもあって、すごく良さそうです。そういえばSさんは、ロンドンのコートールド・ギャラリーには行かれました?」
Sさん「学生時代に行きました。サマセット・ハウスにありますね。一番最初に行った美術館で、あそこはいいですよね!」
春名「何年か前に、マネの『フォリー・ベルジェールのバー』が日本に来ましたけど、その前に僕らは現地で見て感激しました。コートールドは、こじんまりしてるけど見やすい美術館ですね。ウフィツィ美術館とか大きなところは、いい絵がたくさんあって楽しいんですけど、疲れちゃうんですよ」
Sさん「ロンドンだと無料の美術館が多いなか、あそこは入館料を取られますけど、そのぶんの価値があります。ゆったりできるのもいいですね。
それからロンドンだと、テート・ギャラリーも好きなんです。今はテート・ブリテンとテート・モダンに分かれちゃいましたけど。ターナーの部屋も、すごく贅沢な空間でした」
春名「ターナーだらけですからね、あそこは」
Sさん「他のお客さんが全然いないし、こんな空間独り占めしていいのか、という感じでした」
春名「オフィーリアの絵がありますもんね」
Sさん「有名ですよね。でも、最初に行った時は貸し出し中で見られなくて、去年また行って、今年も行きました」
春名「Sさんは、印象派だとどの画家が好きですか?」
Sさん「やっぱりモネとか、ルノワールですかね」
春名「僕もやっぱりモネですね。名古屋で初めて『印象・日の出』を見たときは、衝撃でした。近くで見ると、筆でひょろひょろって描いてあるだけなのに、離れて見るとリアルな風景に見えるんです。どうやって考えて描いてるのか、全然わかりませんでした。
それから、ロンドンのナショナルギャラリーに行った時、ピサロが街の風景を描いた絵が気に入りました。ピサロはいつも地味で、展覧会のメインになるような感じではないんですが、僕は好きです」
あでりー「今回の名古屋市美術館の『西洋絵画の400年』展では、一番最後に飾ってあったモネが本当に良かったです」
春名「モネの睡蓮もたくさんあって、今ひとつのものも多いですが、あれは、いい睡蓮でした」
あでりー「モネは、浮世絵のような構図で、少ないモチーフで空間を活かすような描き方をしていますね」
Sさん「日本画の影響を受けていますよね。太鼓橋とかもそうですし。さっきお話したターナーも、明るい絵もあればちょっと暗い絵もあって、明るいほうの中に、モネの『印象・日の出』に少し似ているような淡い色彩ものがあって、けっこう好きなんです」
あでりー「だいぶ前に、岡崎でターナー展がありました。その時、花畑を描いたターナーの絵があって、それがめちゃめちゃ綺麗で、びっくりしました」
Sさん「ターナーもいろんな絵がありますね」
春名「光だけを描いたような作品とか、淡くもやがかかって、何が描かれているかわからないものもありますね」
Sさん「テート美術館に行った時は、ターナーの描いた『バチカン宮殿から眺めたローマ』という絵がありました。バチカンの回廊からローマを眺めるラファエロをモチーフにした作品で、こんなのも描くんだと驚きました。ちなみにお二人は、ラファエロはお好きですか?」
春名「僕はいくつか、好きな絵はありますよ。『ヒワの聖母』とか、ドイツで見た『システィーナの聖母』とか。ローマのボルゲーゼ美術館にある『一角獣を抱く貴婦人』もいいですね」
あでりー「バチカン美術館には聖母を描いた絵が数枚あって、割と印象に残ってます。ラファエロは、いろんな人の技術をどんどん吸収していく感じが面白いです」
Sさん「線が綺麗なんですよね。昔は宗教画ってどれ見ても同じだと思っていましたが、年を重ねるとだんだん良さがわかってきます」
あでりー「ラファエロがお好きなら、スペインのムリーリョもいいかもしれません。聖母をすごく綺麗に描くんですよ」
春名「Sさんはバチカン美術館でラファエロが描いた『アテナイの学堂』はご覧になりました?」
Sさん「現地のツアーで連れていかれたんですが、たぶん見たと思います」
春名「僕らは朝一番で並んで、1時間ぐらいでようやく入れました。まずシスティーナ礼拝堂に直行して、その時はそこまで混んでなかったので、しっかり見られました。でもその後、『アテナイの学堂』のところに行ったらすごい混雑で、帰ろうとしても出口がわからなくて、人の流れに従って進んでたらもう一度システィーナ礼拝堂に戻ってしまいました。その後、ようやく外に出られたと思ったらサン・ピエトロ大聖堂の近くに出ました」
Sさん「私も、出口に向かっていたら、ミケランジェロの『ピエタ』を見てないことに気づいて、また引き返しました」
春名「個人の観覧者は、バチカン美術館とサンピエトロ大聖堂を行き来できないんです。だから先に大聖堂に入って、出てからぐるっと回って美術館の方にまた並ぶんです。そういえばSさんは、イタリアにはいつ行かれたんですか?」
Sさん「2018年のゴールデンウィークでした」
あでりー「私たちも同じ2018年の2月から3月に行きました。オフシーズンでしたが、バチカン美術館はかなり混んでいました。
Sさんは、いま大阪万博に来ているカラヴァッジョの『キリストの埋葬』は見られました?」
Sさん「見たと思います。でも現地では、ざーっと一気に見てしまいました」
春名「わかります。現地だとすごい作品がどんどん出てきて、感覚が麻痺してきますよね。そういえばミラノでは、レオナルド・ダ・ヴィンチの『最後の晩餐』を見ました。日本から予約して、15分しか見られないんですけど、それで充分でした。部屋の一番前に絵が描かれていて、離れて見ると部屋の立体感と絵が一体化して、部屋がそのまま突き抜けているように見えるんですよ。テレビ番組でそういう解説を見てから行きました」
Sさん「いろんな知識があることで、また違った見方ができますね」
あでりー「今年は、神戸市立博物館の『大ゴッホ展』は、ぜったい行きたいです。クレラー・ミュラー美術館の全面協力で、たくさんの絵画が展示されます」
Sさん「私も行きたいです。『夜のカフェテラス』も来ますし」
あでりー「もう一つ別のゴッホ展もあって、それは来年、愛知県美術館に来ますので、これも行く予定です。さらに別のゴッホ展はポーラ美術館なので、これはちょっと行けなさそうです」
春名「ポーラ美術館は、なかなか立派でいい美術館です。印象派のコレクションが充実していますし、藤田嗣治もたくさんあります」
あでりー「杉山寧(すぎやまやすし)さんという、マイナーですがとても綺麗な絵を描く画家さんがいらっしゃって、その方の作品もたくさん収蔵されています」
春名「箱根は岡田美術館もあるので、セットでお勧めです」
Sさん「SOMPO美術館でユトリロ展もあるんですね。お二人はユトリロはお好きですか?」
春名「暗い印象がありますが、割と好きですよ。僕は日本画の佐伯祐三が好きなんですけど、ああいう暗めのパリの風景が好みなんです」
あでりー「色は綺麗ですし、静かな感じで惹かれます。面白いのが、絵の中にマッチ棒みたいに描いてある人間の数が、必ず奇数なんですよ。実際に見に行って数えてみると面白いかもしれません」
あでりー「今年は大河ドラマで蔦屋重三郎の『べらぼう』を放映しているので、それに関連する展覧会も多いですね」
春名「NHKの大河ドラマをちゃんと見るのは初めてで、蔦屋は絵画に関わる人なので、興味があって見始めたら面白かったです」
Sさん「ふだん、展覧会の情報を得るのはやっぱり本とかですか?」
春名「そうですね、あとはNHKの『日曜美術館アートシーン』。15分間だけ全国の展覧会情報を紹介するコーナーがあって、すごく参考になります」
あでりー「ビアズリー展も行ってみたかったです。見たことがなくて、惹かれるものがありました」
春名「海外の版画も面白いですよね。去年のエッシャー展は、めちゃくちゃ良かったです。だまし絵で有名なんですけど、それ以外にも本当にいろんな絵を描いていて、どんどん別の方向に発展していく様子が見られました。基礎的な画力が高いのにくわえ、たとえばイスラム美術のモザイク模様を研究して、数学的に組み合わせて作品にしたり、ほんとにすごいんですよ。エッシャーの師匠はメスキータっていう版画家ですが、その人の展覧会も一度行ってみたいと思っています」
Sさん「豊田市美術館は、特別展がない時でも行くのは好きで、カフェでお茶を飲んで帰ってきたりします」
春名「雰囲気がいいですよね。外の庭のベンチに座ってゆっくりしたり」
あでりー「6月の終わりにはモネ展がありますね。かなり混みそうですが」
春名「日本はどうしても、フェルメール展とか、人気の展覧会に人が集中しますね。そういえばフェルメールの『窓辺で手紙を読む女』は、修復して天使の絵が復元されたものを日本で見ましたが、修復前の絵もドレスデンの美術館で見ました。印象が全然違いましたが、修復前の方が良かったなと思っちゃいました(笑)。フェルメールは、僕らは二人とも好きなので、現存する36枚の絵のうち、24枚を見ました」
Sさん「すごいですね。アメリカでも見られました?」
春名「いえ、アメリカは行っていないので、日本に来たものだけ見ました。アメリカもいい美術館がたくさんありますね。ニューヨークのメトロポリタン美術館やフリック・コレクション、ワシントンのナショナル・ギャラリーもいいですし」
あでりー「去年、日本で展覧会があったウスター美術館も、いい作品がたくさんありますね。改修のために所蔵品を日本に貸し出していて、初来日作品も多かったんですが、行けませんでした。あまり貸し出しをしない美術館なので、行けたらよかったなと今でも思います」